
グリーフとは…
About Grief
喪失体験によって湧き上がってきた感情や考えを、思いのままに表に出せず、心にフタをして抑え込んでしまった状態を英語で「グリーフ(grief)」と言い、日本では主に「悲嘆」と訳されています。
死別や離別によって大切な存在を失った時に、深い悲しみが続いたり、心身の不調を感じたりしたことはないでしょうか?
グリーフの感じ方は千差万別ですが、代表的な反応としては次のようなものが挙げられます。
・大切な人を亡くしてからすっかり気落ちしてしまい、何もやる気が起きない。
・強い悲しみに襲われて涙が止まらなくなる。
・いつになったら元気になれるのだろうかと不安になる。
・何か体の一部をもぎ取られたように、心にぽっかりと穴が開いたような感じがある。
・現実を受け止めることができずに、前に進めず立ち止まっている。
グリーフは、このような心の問題だけでなく、身体面や認知面、自分の人生についてなどさまざまな部分に影響を及ぼす可能性があることも分かっています。
一般的に、死別による悲嘆をグリーフと定義されることが多いですが、それ以外にも、離婚や病気、引っ越しや失職など、死別以外の喪失体験によっても、グリーフを経験することがあります。
グリーフは病気ではなく、誰にでも起こりうる自然な反応です。ストレスがかかった状態が続くことで身体面に悪影響が及ぶこともあり、適切な対処が必要です
なぜ、心にフタをしてしまうのでしょうか?
胸のうちに抱えている悲しみや苦しみを表現することは、時に難しいものです。
特に、日本人は感情表現が苦手だったり、「人に迷惑をかけてはいけない」「感情を表に出すのは良くない」と考える人が多く、努めて感情的にならないようにしている傾向があります。
他にも、生活を続けなければならないプレッシャー、社会通念、地域の習慣や風習などによっても、心から湧き起こってくる思いや感情を表に出せず、心にフタをしてしまっていることもあります。
大切な人を亡くした心の痛みは、目に見えるものではありません。
思いや感情をうまく表現することができないままだと、周囲からも気付かれにくく、一人で抱え込むしかなくなってしまいます。
周囲からのサポートの手が届かず、孤立の状態に陥ると、グリーフの反応はより大きくなります。

あなたはおかしくなったわけではありません
グリーフの状態にある時、多くの人が「自分はおかしくなってしまったのではないか」と感じるような体験をしています。
たとえば、喪失体験の後に、このような体験をすることによって、自分がおかしくなった、変なのではないか?と感じてしまうのです。
1.
眠れなくなる、又は眠くて仕方ない。
2.
話されたことを覚えていられない。
3.
何も感じない、又はさまざまな感情がとめどなくあふれてくる。
4.
生きていくのがつらいと感じる。
5.
誰にも自分の気持ちをわかってもらえないと思う。
どのような感情や思いが湧き上がってきても、変な感覚に襲われても、あなたはおかしくなったわけではありません。
それは大切な人を亡くしたことに対する、ごく自然な反応ですから、安心してください。
自分に優しくする時だということを知ってください。
ありのままの自分の気持ちでいて良いのです。
グリーフとモーニング
私たちがグリーフについて説明するときに、グリーフ(悲嘆)とモーニング(悲哀)という2つの言葉を使っています。
大切な人との死別をはじめとする喪失体験によって湧き上がる、さまざまな思いや感情を心にフタをして外に出せなくなっている状態を「グリーフ」と言い、それに対して、思いや感情が自分で心のフタを開けて表現できている状態のことを「モーニング」と言います。
【グリーフ】
喪失体験によって湧き上がるさまざまな思いや感情が外に出せなくなっている状態

【モーニング】
思いや感情が自分で心のフタを開けて表現できている状態

グリーフサポートの大切さ
グリーフサポートとは、その人が押さえ込んでいた感情や思いを「自分らしく」表現できるように寄り添うことです。
グリーフからモーニングの状態に変わり、自分の気持ちや感情を表現できるようになっても、何かの出来事をきっかけに、
再びグリーフの状態に陥ることもあります。
何度も「グリーフ」と「モーニング」の間を行ったり来たりしながら進んでいくプロセスを、たった一人で自分の気持ちと向き合うのではなく、周囲の人々が受け止めて共感し、あたたかく支えることがグリーフサポートなのです。
サポートを受けること、たとえば、誰かに最後までちゃんと話を聞いてもらうなど、心の中にためこんでいた感情や考えを表に出すことができるようになると、気持ちが整理されていき、だんだんと落ち着いてきます。